その瞳に私を写して
もしかして、本当に自分を見ている?

麻奈が、それは誤解だと気づいたのは、6階に着いてからだった。


6階にあったのは、新人写真家の写真展だった。

「勇平君の写真も、ここにあるの?」

「うん。あそこだよ。」

連れていかれたのは、一番奥の奥だった。


「へぇ~。」

勇平の写真を作品として見るのは、麻奈は初めてだった。

麻奈は写真の事は素人だが、勇平の作品は、躍動感があると思った。

と同時に、写真の世界の厳しさも、知ったような気がした。


勇平の写真を飾っているスペースは、決して人が少ないわけではない。

むしろ、他のスペースより多いような気がした。


そして、この人を引き付ける魅力がある写真。

それを持ってしても、一つの雑誌の専属カメラマンになるのは、難しいことなのだ。


「勇平君、大丈夫だよ。」

「ん?」

「きっと、専属になれるよ。」

「えっ?そう?」

「そうだよ。この写真見てれば分かるもん。」
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