その瞳に私を写して
「酔ってるついでに聞くけど。麻奈さん、俺の事どう思ってるの?」

「どうって?」

「俺の事、好き?」


そんな事を真面目に聞いてくる勇平を、麻奈は知らない。

知らないから、ついていけない。


「つまらない事、聞くんだね。」

そしてなぜ、そんな事言ってしまったのか。

麻奈自身も、分からなかった。

「つまらない?」

「そうだよ。はっきり言葉に出さなくても、いい事だってあるよ。」


突然、勇平は立ち上がり、ゆっくりと麻奈の上に覆いかぶさった。

「麻奈さんが、俺の事好きかどうか聞く事が、つまらない事?」

「いや……それは……」

「麻奈さんも、俺の事好きなのかなって思ったのは、俺の勘違いだった?」


勘違いなんて……

麻奈が答える前に、勇平の唇が近づいてきた。


「ごめん。」

麻奈の頬に、涙が一粒零れた。

「私、まだ忘れられない人がいる……」

「知ってる。中谷先輩の事でしょ。忘れなくていいよ。中谷先輩の事だったら忘れなくていいから!」
< 48 / 81 >

この作品をシェア

pagetop