その瞳に私を写して
「無理だよ!!」

知らず知らずに麻奈は、頭の中でずっと悩んでいた事を、勇平にぶつけていた。

「私、勇平君を正也の代わりにしてるかもよ。」

「麻奈さん?」

「勇平君を見ながら正也の事見てるかもよ。」

「麻奈さん!」

顔を上げたそこには、笑顔が得意ないつもの勇平がいた。


「俺の話も聞いて。ね。」

「ごめん、聞けない。」

勇平の腕をするりと抜けて、部屋に行こうとする麻奈を、勇平は、後ろからきつく抱きしめた。

「誰かの代わりでもいいんだ。それで麻奈さんの側にいられるなら。」

「うそだよ。」

麻奈は、冷たく言い放った。


「どうして嘘だって言うの?」

「誰だって、誰かの代わりにされたら傷つくよ。」

「まあ、そうだけど。」

「私、勇平君をそんな事で、傷つけたくないよ。」

そして後ろから、クスッと声が聞こえてきた。


勇平を見ると、彼はいつものように笑っていた。

「こんな時に、どうして笑うの?」
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