その瞳に私を写して
ある人の訪問から始まった疑惑
冬にしては、暖かい陽気の日。

キャシーが困った顔で、オフィスに入って来た。


「Mana……」

「どうしたの?」

顔を上げた私の目に、信じたくない顔が飛び込んできた。

「よう、久しぶり」

麻奈は、目を丸くした。

「なんだ?感激しすぎて声も出ないか。」

「正也……」

なぜ、正也がここにいるのか。

麻奈は、茫然とした。


「なんだ?何もしゃべらないのか?」

正也は、自分のオフィスのように、勝手に空いている椅子に座る。

「聞けば?なんでここにいるの?って」

「どうしてここにいるの?正也。」

「そのまんま聞くのか。」


生意気な口調、図々しい態度。

相変わらず、正也は正也のままだ。


「正也~!」

私は久々の正也に、半分泣きべそをかきながら、正也の元へ行こうとした。

「は~い、ストップ!」

正也は、手を前に出した。

「それ以上、俺には近づくな。」

「何よ、それ!」

「泣きそうになりながら来るな!」
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