その瞳に私を写して
「禁煙。」

「ここではいいだろうよ~。」

「ここは、アメリカよ。禁煙禁煙ってうるさいのに、まだたばこ吸ってんの?」

正也は舌打ちしながら、たばこをポケットの中に入れた。


「じゃあ正也は、NYで仕事してんの?」

私の問いに正也は ニカッっと笑った。

な~んだ。

こいつも、NYに来たんだったら、別れる事なかったじゃん。

麻奈は心の中で、呟いた。


「NYと東京でな。行ったり来たりの大忙しよ。才能のあるやつっていうのは、どこの国でもひっぱりだこなんだよな~」

「どこの国でもって、日本とアメリカだけじゃん。」

私のぼやきに、正也はクククツと、笑いを堪えている。


神様。

私、なんでこんな人を好きだったのでしょう。

しかも5年も。

麻奈は、空を見上げた。


「ところでお前さん、相変わらず色気ないね。」

正也は、麻奈を見ながら言い放った。

「年下の彼氏見つけて、少しで色気でも身につけたかと思ってたぜ。」
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