その瞳に私を写して
「おっかえり~麻奈さん。」

「ただいま。」

帰宅した麻奈は、思いっきり不機嫌だった。


「不機嫌だね~。会社で何かあったの?」

その勇平の軽そうな問いに、麻奈は軽く怒りを覚えた。

「今日、正也が私のオフィスに来たよ。」

「中谷先輩が?」


わざとらしい。

麻奈はそんな風に思ってしまった。


「どういう訳か正也、私と勇平君が付き合っていると思っているんだけど。」

うつむき加減で勇平君は照れている。

「何照れてるんの?」

いつもとは違う麻奈の態度に、勇平も危機感を感じたのだろうか。

少しずつ麻奈から、離れていっている。


「二人で、私の事騙してるの?」

「騙す?どういう事?」

勇平は立ち止まって、麻奈と向き合った。

「私が正也と別れた後、勇平君と出会う事を正也は知っていた。どうして知ってるの?いくら勇平君が、正也の後輩だからって、NYにいるか分からない勇平君と、私が出会う確立なんてたかが知れてるじゃない。」
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