その瞳に私を写して
「なんだよ、麻奈。汚い。」

「何よ、それ。」

「まっ。NYに来たら、いつも同じホテルの同じ部屋に泊まるからさ。俺の部屋みたいなもんだよ。はははっ」

勇平と同じように、正也は相変わらずだなと、麻奈も思った。


「じゃあ、勇平君は正也の所にいるんだ。」

「ああ。」

「とりあえず……安心した。」

勇平を心配する顔を見て、正也はどう思ったのかと、麻奈は気になった。


「麻奈は、勇平の事好きか。」

「何言い出すの?急に~。」

「いいから。好きか。」

正也の表情は、真剣だった。


「……分からない。」

「そうか……」

正也はそれから、しばらく黙っていた。

正也のすごいところは、曖昧な答えを出しても、ちゃんと理解してくれるところだ。


「あいつ、麻奈の事で悩んでたぜ。」

「勇平君が?」

麻奈は思わず、家を出て行く時の、勇平の顔を思い出した。


「俺はな、麻奈。」

正也は静かに語った。
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