その瞳に私を写して
正也は勇平に、仕事を教えてやったり、食事や飲みに連れていったり。

簡単な言い方をすると、勇平は正也にとって、いい後輩だった。


その頃正也には、何年も付き合っている”彼女”がいた。

麻奈と言って今のところ、彼女と呼んだのはこの女、一人だけだった。

勇平とは仕事以外でも、遊びに連れて行ってたから、当然麻奈にも勇平を紹介したわけだ。


その後数ヶ月して、正也は勇平を麻奈に、紹介した事を後悔した。



「どうして?私、あの頃は勇平君のことなんて眼中になかったわよ。」

「まあ、聞いてなって。」

正也は、麻奈を宥めた。


勘ってやつ。

勇平が、麻奈を見ているのに、正也は気づいてしまった。

だが勇平は、麻奈を口説く訳でないし、正也との関係がギクシャクしたわけでもないし、何より麻奈は、勇平のことなど見向きもしなかった。


正也は正也で、嫉妬だったのか。

それともまだ、麻奈に情があったのか。

勇平を麻奈から遠ざけた。
< 73 / 81 >

この作品をシェア

pagetop