その瞳に私を写して
そして今ようやく麻奈は、正也の事をふっきれたような気がした。


「勇平まだ、俺の部屋から職場へ通ってるぜ。」

正也は麻奈の気持ちに、気づいたらしい。

「世の中は、クリスマスだな~。」

そう言って正也は、フッと笑った。


麻奈は急いで、カフェ・オ・レを飲みほすと、店の外へ出ようとした。

帰りがけ、麻奈は忘れ物をした気になり、正也の方を向いた。


「正也。」

「ん?」

「言うの忘れてた。」

「何?またたばこの事か?」

「私ね、正也と付き合って、本当によかったと思うよ。」

「ああ。」

正也はいつもの手馴れた感じで、返事した。


麻奈は、時間に追われているかのように走った。

会いたい、今すぐにでも勇平に、会いたい。

正也に書いてもらった地図を頼りに、勇平のいるホテルを探した。


NYで出会う前から、自分を見ていてくれた彼。

ドジで頼りない男の子と、胸が高鳴るくらいかっこいい男性と、両方が見え隠れする彼。


会いたい。

会ったら、二度と離したくない。

勇平が好きだと、麻奈はっきり知ってしまったから。
< 76 / 81 >

この作品をシェア

pagetop