世界中に続く空
生意気そうな彼女の目に、涼は苛立ちを隠せなかった。

「何だよ」

思わず、因縁をつけてきた相手に言うように、言葉を発していた。

「あんた、小さいわねー!」
 
予想以上に大きな高い声で、女は一樹を指して言った。
 
はぁ? 何だとコラ、と、指された本人は不機嫌を思い切り顔に出し、眉を寄せて女に凄む。

しかし女は、それを気にせず、更に軽蔑の眼差しで二人を見た。

「世の中平和? 刺激を求める性格? 流れる白い雲を目で追いかけてる?」
 
一樹は顔を仄かに赤くして、黙ってしまった。

「何が平和よ、そんな言葉はね、世界を見てから言いなさいよね。ぼーっと白い雲を追いかけるなら、そのまま世界中追いかけなさいよね。そうしたら嫌でも見えてくるんだから」
 
女の勢いに多少圧倒されはしたものの、徐々に自分の呼吸を取り戻した涼は、一つ息を吐いてから言った。
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