世界中に続く空
「とりあえず新聞だよ、新聞!」

「どうしたの、急に熱くなっちゃって」
 
突然の一樹の様子に涼は首を傾げて訊ねた。

一樹は照れたように首筋を爪で掻き、唇を尖らせて呟いた。

「自分のことだけ考えてれば良いってほど、自己中心的だとは思ってないし。戦場になってる国のために俺が何かできるってほど自惚れてもないけど、俺らみたいな奴が一人でも多くそのことを知るだけで、何か変わるんじゃないかって、思ってさ」
 
涼はふっと鼻息を吐いた。
なんだよ、と一樹が睨む。

「皆同じなんだよな、きっと。何かキッカケがないと、動き出せないくらいに鈍いけど」
 
それにしてもお前って素直なやつ、と涼は笑った。
 
一樹は何も言わず歩いていく。きっと、恥ずかしいのだ。

流れる茶髪から覗く耳が、わずかに赤い。
 
ふと振り返り、開きっぱなしの扉から覗く空を仰ぎ見る。
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