お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
“特別”
その言葉を聞いた瞬間、目の前の景色の色が変わった気がした。
なぜ、アレンがいなくなって寂しかったのか。
なぜ、アレンじゃないとダメなのか。
そんな分かりきった答えに、ようやく気づく。
『アレンが自分から離れていくことが嫌だと思うのは、幼馴染みがいなくなるからという理由だけではないでしょ?』
頭をよぎるのは、かつてのメルさんのセリフ。
今なら、その意味がわかる。
私は、アレンのことが“好き”なんだ。
執事ではなく、男の人として…
意識した瞬間、ぴた、と足が止まった。
きょとん、としたアレンも、私につられて立ち止まる。
「あの、アレン。…聞いてもいい?」
「?はい。」
「その……、私は、アレンにとって特別?」
「え?」
それは、予想外の質問だったらしい。
アレンは、私にとって特別だ。彼が私に好かれていると自惚れたって構わないくらい。
すると、迷う時間もなく、彼はさらり、と私に答えた。
「特別ですよ。」
「…!」
「何をいまさら。…貴方にお仕えしてから、ずっと、お嬢様は私の特別ですよ。」