お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
第4章*一生、貴方にお仕えいたします。
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「ーーっ、不意打ちすぎる…」
くしゃ…、と前髪をかきあげるアレン。
ぼそり、と出た独り言は、もちろん、ニナに対しての言葉だ。
頭をよぎるのは、数分前の会話。
どうせ深い意味は伝わらないだろうと思ってさらりと口にした告白に、あれだけ反応されるとは思っていなかった。
(可愛いすぎる…、だろ…)
動揺しすぎて、屋敷へ帰りながら精神統一を始める執事は、どこを探してもアレンくらいだ。
しかし、長年の片想いを拗らせている彼にとって、ニナの意識が変わってきたことは大事件。相手の一挙一動に振り回されるのが自分だけではなくなったことが奇跡なのである。
…と。
何となくそわそわしながら屋敷の玄関を開けた、その時だった。
「おかえり。」
「わぁっ?!!!!」
目の前に現れたトレンチコートの男性に飛びのくアレン。
そんな反応に、ムッ、と眉を寄せたのは、メルである。
「なんだ、人をオバケみたいに。こっちがびっくりした。」
「いや、すみません。ちょっと、考え事をしていて…」