お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。

しかし、やっと反撃の糸口が見つかりそうになったものの、アレンの心は未だ晴れなかった。


ヴィクトルが国内の捜査に乗り出したとは言え、国内の港の数は、ゆうに百を超えている。

廃港に絞ったとしても、人の出入りのないその場所は、行く道さえも獣道となり、人目のつかない僻地に点在しているのだ。

ニナが今どのような状況に置かれているのかも分からない以上、悠長にしている時間はない。


(何とかしてモニカから直接、監禁場所を聞き出すことが出来たら…)


ーーと。

アレンが、ぐっ、と手のひらを握りしめた、その時だった。


「行くつもりなんでしょう?ラズナー家のお屋敷に。」


(!)


その声の主は、サーシャだった。

碧瞳が、まっすぐアレンを映している。

彼女は、アレンの心境を察しているらしい。周りにいくら止められたところで、情報が得られるのを待っているだけなんて耐えられない。

それは、サーシャも同じであるようだった。

すると、次の瞬間。サーシャは誰もが予想していなかった一言を口にする。


「行きましょう、アレン。私と一緒に。」


「ふぇっ?!!」


声を上げたのは、ルコットだ。

サーシャの専属執事が、お嬢様の発言に狼狽えている。


「な、何を言いだすんです?!サーシャ様!」


「落ち着いて、ルコット。きっと、私を誘拐したと思い込んでいるモニカは、本物の私が現れれば少なからず動揺するはずよ。ポロッ、と仲間の悪い人達に連絡するかもしれないじゃない?」


「そうかもしれませんが…、危険すぎます!!」

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