お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
ぴくん。
モニカが、わずかに紫紺の瞳を細めた。
ギ…ッ、と彼女の椅子が音を立てる。
「なぜ、そんなことを?何のことだか、さっぱり分かりませんわ。」
「誤魔化さないでください。貴方の家の馬車に、サーシャ様が乗せられて連れ去られるところを見た人がいるんです。」
「初耳ですわね。サーシャ様は、運悪く事件に巻き込まれてしまったのでは?私の指示ではありませんので、同情くらいしか出来ませんわ。」
ぐっ。
握りしめた手に力が入った。
どうやら、モニカはどこまでもシラをきるつもりらしい。どんな証拠が出てこようとも、口を割る気はないようだ。
「なぜ、このようなことをするんです?単なる逆恨みにしては度が過ぎています。」
「そんなこと、いくら話したって平行線よ。もう帰ってくださる?これ以上ここに居座る気なら、衛兵を呼びますわよ。」
強気な態度を崩さないモニカ。
しかし、次の瞬間。
彼女の予想を遥かに上回る声が屋敷に響いた。
「いつまで、そうしてしらばっくれるつもり?」