お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
バン…!!
半ば強引に蹴破られた部屋の扉。
その先に現れたのは、燕尾服のアレンと、オレンジのワンピースを着た少女である。
少女を見た瞬間、モニカの顔つきが一変した。
「さ、サーシャ…?!なぜここに…!!」
パッチリとした二重の瞳に、栗色のロングヘア。すらりとした色白の肌は、モニカと交友のあったサーシャそのもの。
しかし、その発言を聞いた少女は、クッ、とモニカを睨みつけて低く答える。
「サーシャ?何を言ってるの。私は、“ニナ”。サーシャの双子の姉よ。」
「双子…?!」
呆気にとられるモニカ。
瓜二つの容姿に、言葉が出ないらしい。
コツコツと部屋に踏み込んだ“自称ニナ”は、ルコットの隣で立ち止まり、モニカに向かって言葉を続けた。
「もう、調べはついてるわ。貴方は、自分がヴィクトル様と結婚できなかった腹いせに、お金で雇った人たちにサーシャを誘拐させたんでしょう?」
「な、何のことだか…」
と、次の瞬間。
少女の碧瞳がギラリ、とモニカをとらえ、オレンジのワンピースの裾が、ひらりと舞った。
「あんた、いい加減にしなさいよ。」
ガン!!
片足のヒールが、思いっきり執務室の机に食い込む。
予想外の行動に硬直するモニカと、思わず目を見開く二人の執事。
そのまま、ぐい!とモニカの襟を掴んだ“ニナ”は、見下すような軽蔑の視線で低く言い放った。
「こんなことをして、恥ずかしくないの?ワガママが通らなかった子どもがいじけているのと同じだわ。貴方のしていることは、立派な犯罪よ。いつまでも言い逃れが出来ると思って?」
「…っ!」