お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
私は、ニナ=ハンスロット。
こう見えて、ハンスロット家のご令嬢である。
幼い頃からおてんばで、ピアノのお稽古よりも野原を駆け回る方が好きだった私は、いつしか清楚で可憐なお嬢様道から外れ、自由奔放に好奇心のまま突っ走るじゃじゃ馬になってしまった。
そして、楽しいことを求めて自由に遊んだ後は、いつもお母様に同じセリフで怒られるまでがセットである。
『こら!ニナ!!いい加減、女性らしくしたらどうなの?!サーシャを見習いなさい!』
サーシャというのは、私の双子の妹のこと。
双子ゆえ、瞳の色以外はほぼ同じで、背格好や声、顔のパーツは親でもたまに間違えるほどそっくりだ。
しかし、サーシャはおてんばな私とは違い、華奢で清楚で聡明で、優しくて可愛くて…、姉の私でさえ“天使か…!あんたは…!!”と叫びたくなるくらい完璧なお嬢様である。
私は、お母様にいつもサーシャと比較され続けてきたが、サーシャを羨んだり妬んだりしたことは一度もない。むしろ、親の期待を一身に背負い、可憐なお嬢様であり続けているサーシャに尊敬の念すら抱くほどだ。
サーシャがいなかったなら、私はとっくに親と喧嘩をして家出をしていたことだろう。