お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
薔薇色の瞳を細めて楽しそうに笑った彼。
すると、アレンは静かに言葉を続けた。
「まさか、ずっと俺に気付いてたのか?」
「まあね。燕尾服を着たアレンが別人のようにニコニコ執事やってるのは面白かったよ。」
無邪気に笑うダンレッドは今夜の出来事を悠々と見物していたらしい。
すると、彼は腕を組んでぽつりと尋ねた。
「そういや、アレン。一つ聞いていいか?」
「ん?」
「お前が今日連れてた嬢ちゃん。ほんとは本物のサーシャ嬢じゃないだろ?」
呼吸が止まった。
目を見開くアレンの反応を見て、確信を得たようなダンレッド。彼は、「大丈夫!」と続けて再び無邪気な笑みを浮かべた。
「他の奴にバラしたりしないから安心してよ。これでも、俺は勘がいい方でさ。人を見る目には自信があるんだ。」
「仕草で気付いたのか?」
「んー…、まあそれもあるけど。一番は、ハンスロット家のニナ嬢に長年片想いしてるお前が、専属契約を切って他のお嬢様に仕える真似はしないだろうって思ったから。」
思わぬ爆弾。
先ほどの執事達の攻撃より、はるかにタチが悪くダメージがでかい。
最悪だ。いつからバレていた。
「可愛かったよな〜。当時十一歳のお前が六つも歳上の俺に、好きな子ができた、って相談しにきてさ〜…」
「それ以上言ったら殴るぞ。」