お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
第2章*こちらが、最恐の先生でございます。

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「はーっ!これで、頼まれたものは全部揃ったわね…!」


買い物カゴが、ゆらゆらと揺れる。


『やぁ、ニナちゃん!おつかいなんて偉いね!』


『今日も元気だな!ウチの魚屋に用はない?おまけするよ!』


「ありがとう!また今度買いに来るわ!」


おつかいの帰り道。町の市場でテントを張る人々が、にこやかに声をかけてくる。

市場は活気にあふれていて、とても賑やかだ。町の人たちは、私がなにかとお屋敷を抜け出して遊びに来ていたこともあり、顔馴染みばかりである。

彼らの目には、普段、専属執事のアレンと共によく町を歩いている私がひとりでいるのが、少し珍しく映るらしい。


アレンは、普段は常に私の側を離れず行動を共にしているが、今日は朝から忙しそうに連絡を取っていて手が離せないようだった。

詳しく説明してくれなかったが、どうやら大切な用事があるらしい。


(そういえば、昼までに帰ってくるように言われていたわね。そろそろ十二時だし、急がなきゃ。)

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