お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


「さ、ここが私の家です。応接室に案内をするので、そちらで待っていてもらえますか?」


「あぁ。助かるよ。」


やがて屋敷に到着した私は、コートの男性を中へ招き入れた。

応接室のソファに腰を下ろした彼と別れた後、私はコツコツと廊下を進む。


この屋敷に、あんなにカッコいい人と知り合いだという人なんて、いるのだろうか?

旧友に呼ばれた、と言っていたが、私はどうもピンとこない。


(アレンなら、何か知っているかしら…。)


廊下の角を曲がった瞬間、大きな影が目の前に現れた。

ぶつかった衝撃でよろめく私を受け止めたのは、力強い男性の腕である。


「おっと、ごめん!大丈夫?」


隣国の紋章が刻まれた腕章と、白い軍服。

こげ茶色の前髪から覗く、ぱっちりとした薔薇色の瞳が私を映した。

はっ!としたその時。軍服の彼の隣を歩いていた青年が、驚いたように声を上げる。


「お嬢様!お帰りになられていたのですか…!」


軍服の男性の隣に立っていたのは、いつもの燕尾服を着こなしたアレンだった。専属のお嬢様が帰ってきたのにお迎えにも来ない彼は、来客を出迎えていたらしい。

アレンを見つめていると、私を受け止めた腕を離した軍服の彼が、にっ!と笑う。


「あぁ、ニナ嬢だったのか…!噂通り、可愛い子だね!」


「えっ?」


「ダンレッド。初対面で口説かないでください。」

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