お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
「恋なんてよく分からないけど、私もサーシャと一緒にパーティーに行けば、未来の結婚相手に出会えたりするのかしら?」
「はい…?」
ふと、声に出た言葉に、急に低く唸ったアレン。
猫を抱きながら眉を寄せた彼に、きょとん、としながら言葉を続ける。
「ほら。お母様に、“ニナも結婚相手を探しなさい”って言われ始めたから。やっぱり、ずっと、子猫とじゃれていてはダメでしょう?」
「まぁ、確かに一理ありますが。…もし、気になる男が出来たなら一度私を通してくださいね。」
「どうして?」
「当たり前でしょう。私は、お嬢様専属の執事ですから。」
答えになっているのか分からないアレンの返事に、ぱちぱちとまばたきをする。
アレンは、何やら機嫌が悪くなったようなオーラを飛ばしていたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻ると片手で猫を抱いたまま私の手を取った。
「私は別にお嬢様らしくなくたっていいと思います。貴方の魅力は、子どものように無邪気なところですから。」
「それ褒めてる…?そうやって甘やかして、もし私が行き遅れたらどうするの?」
「その時は、私が貰い受けますよ。」
「あははっ…!面白いけど、冗談キツイわ!」
「………。」