お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。

ごくりと喉が鳴った。

しかし、ここで後戻りは出来ない。この二週間、私なりに最大限の努力をしてここまできた。

どんなことがあろうとも、絶対、サーシャを完璧に演じ切ってみせる…!


と、その時。

城の前に、見覚えのある縦ロールが見えた。

ピンクのドレスを着た彼女は、私の姿を見た途端、華やかな笑みを浮かべる。


「サーシャ様…!お久しぶりですわ!」


「モニカ…!貴方も来ていたのね!」


それは、以前、パーティーで知り合いになったモニカであった。

相変わらず人畜無害そうな箱入り娘オーラを飛ばす彼女に、アレンもすっ、とお辞儀をする。


「こんばんは、モニカ様。パーティーでお会いして以来ですね。」


「あぁ!えっと…、アレンさんでしたっけ?お久しぶりですわ!この前はどうも…」


ぺこぺことお辞儀をするモニカ。

私は、初めての友達との再会に少し浮かれながら口を開いた。


「モニカも、舞踏会に参加するの?」


「あっ!いえ!今日は、父の付き添いで来ただけですの。ダンスは、ちょっと苦手で…」


「付き添い?」


彼女の話では、モニカの父は貿易商であり、大きな船を使う海外との取り引きから国の郵便物の流通まで、幅広く事業を展開しているらしい。


「ちょうど、舞踏会に使うオーケストラの楽器を運び終えたところでもう帰るつもりだったのですが、城の前にいたらサーシャ様とまた会えるかもしれないと思って、待っていましたの。」


「そうなんだ…!わざわざありがとう!私も、会えて嬉しいわ!」

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