お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
にこやかな談笑の後、ふわりと微笑んだモニカは、私とアレンに手を振って会場に背を向ける。
「では、また…!今夜の舞踏会、楽しんで下さいね!」
「えぇ!またね、モニカ!」
と、その時。
去り際に立ち止まったモニカは、くるり、と振り返って私を見つめる。
「あ、言い忘れていましたわ!サーシャ様。そのドレス、とってもよくお似合いですわね。」
にこり、と笑った彼女。
メルさんからのプレゼントを褒められて、つい、顔が緩んだ。
お辞儀をして駆けていくモニカは、本当に私を待っていただけらしい。いじめっ子の相手をしてきただけに、彼女の健気さに胸が震える。
「さ、お嬢様。そろそろ会場へ向かいましょうか。メルさんも中にいるかもしれません。」
「そうね。見てて、アレン。私、しっかりステップを踏んでみせるわ!」
一縷の望みをかけ、私は足を踏み出した。
メルさんは、きっと来てくれる。
微笑んで頷いたアレンも、師匠の姿を待ち望むかのように顔を上げた。
そして。
私は意を決し、一歩、優雅な演奏が鳴り響く会場へ乗り込んだのだった。