お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
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穏やかなクラシックが響くフロア。
シャンデリアの下で執事と共に舞う、美しい令嬢たち。
その脇のテーブルにはティーセットが準備されており、鑑賞の時間も休憩もしっかり取れるようだ。
(メルさんは、どこにいるのかしら…?)
会場には、舞踏会に参加する令嬢の他に、王子に招待されたゲストや街の観客も多く詰め掛けているらしい。
アレンも、態度には出さないがどこか落ち着かないようだ。
すると、彼が険しい顔で呟いた。
「変ですね。そろそろ会場入りしていてもおかしくないのに…」
「メルさんのこと?あれだけの美人なら、すぐ目にとまるんじゃない?」
「違いますよ、お嬢様。私が探しているのはシェリンダ様です。」
アレンは、今夜のライバルになるであろうお嬢様を気にかけていたらしい。
「あの方の性格上、ヴィクトル王子に気に入られているサーシャ様を目の敵にしているはずです。何も仕掛けずにいるなんて、考えにくいのですが…」
ーーと。
アレンが低く呟いた、その時だった。