お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
「同じドレス…?!」
細やかな刺繍が施されたオレンジのドレス。ふんわりとしたベールに、散りばめられたラメ。
それは、今、ここで私が身につけているドレスと、全く同じデザインのドレスだった。
(どうなってるの…?)
驚きのあまり思わず言葉を失っていると、じっ、とこちらを見下ろしたシェリンダは、わずかに目を細めて呟いた。
「あら…?そちらのドレス。貴方も、ミ・ロヴァの一品ですの?」
「ミ…?」
「舞踏会でフォルムが綺麗に広がる、セレブ御用達のブランドですわ。まさか、全く同じものを選んでくるなんて、さすがサーシャ様。お目が高いですわね。」
どうやら、一口にドレスといっても、舞踏会向きで有名なブランドがあるらしい。
貰い物ゆえ、全くの無知だった私は、余裕のない笑みでその場をしのぐ。
しかし、その時。シェリンダの側に控えていたペアの執事が、くすり、と笑って彼女に告げた。
「シェリンダ様、お気遣いは無用です。…見る限り、あちらのドレスはミ・ロヴァのコピー品。シェリンダ様の本物のドレスとは、値段も質も桁違いの偽物でしょう。」