お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
「ごめんなさい、ヴィクトル様…!すべては、私のせいなんです…!」
声をあげたのは、他でもないサーシャであった。
立ち尽くす王子に駆け寄った彼女は、必死に想いを口にする。
「私が、お姉さまにお願いしたんです…!意地悪をする人たちから守って欲しいって!」
「サーシャ…?!何を言って…!」
嘘をついてまで庇おうとする妹に、つい立ち上がった。
素早くサーシャと王子の間に割り込んだ私は、もう変装も演技も何もかも諦めて詰め寄る。
「サーシャは悪くないわ!全部、私が提案したの!サーシャになりすまして悪者を懲らしめるってワガママを言ったのよ!だから、サーシャを嫌いにならないで!この子は、私と違って本当にいい子なの!!」
もはや、自分が紅茶まみれでボロボロな姿であることなんか飛んでいた。
頭の中にあったのは、サーシャの恋を守りたいという想いだけ。
すると、次の瞬間。
ずっと黙って瞬きをしていた王子が、堪え切れないように、ぷっ!と吹き出した。
「あはははっ!どうりで…!最近のサーシャはいつもと違うと思ったよ!まさか、双子のお姉さんだったとはね!」
「「へっ…!」」