お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
予想外の反応に、つい固まる私とサーシャ。
成り行きを見守っていた仲間達も、呆気にとられている。
「僕がサーシャが好きだと公言したせいで、トラブルが起こっているということは気付いていたからね。僕が守らなければと思っていたけれど。…お礼を言うよ、ニナさん。サーシャの騎士(ナイト)になってくれて、ありがとう。」
「えっ?あ、はい、どういたしまして…」
「違うでしょう!お嬢様!」
思わず手を取り握手を交わした私に突っ込むアレン。
一方、様子を伺っていたダンレッドは、薔薇色の瞳を細めて王子に尋ねた。
「つまり、お咎めなしってこと?」
「あぁ。こんなことで、僕のサーシャへの愛が失われるわけがない。彼女が天使のように優しい心の持ち主だということは、僕が一番分かっているからね。」
にこり、と王子スマイルを浮かべるヴィクトル。
ぽっ!と顔を赤くしたサーシャも、緊張が解けたように、へなへなと座り込んだ。
ということは、婚約破棄は間逃れたということか?
「やったあ!サーシャ!これで、王子も仲間入りよ!」
「こら!失礼でしょう!はしゃがない!」
すっかりいつもの調子を取り戻し、お説教を飛ばしたアレン。しかし、そんな彼も嬉しそうだ。
ルコットに至っては、ずびずびと鼻水をすすりながら号泣している。
こんな奇跡、あるのだろうか。