お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
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♪♩〜♫♩♪〜♬♪♫
穏やかなクラシックが響くフロア。
シャンデリアの下で執事と共に舞う、美しい令嬢たち。
そこは、ここに来た時と変わらない華やかな世界。
一歩、足を踏み入れた途端、一斉にゲスト達の視線が集まった。
しかし、それはかつての悪意のある視線ではない。
『ねぇ、見て!あれって…!』
足の動きに合わせてひらひらと舞うドレスは、先程までのものとはまるで違った。
純白の生地に、色とりどりの花のコサージュ。宝石が散りばめられたような虹色のラメが、シャンデリアの光に反射してキラキラと輝いている。
『ミ・ロヴァだわ…!綺麗…!』
『しかもあれは、世界に一点しかないビンテージ品だぞ…っ!』
流星のごとく現れた令嬢に、誰もが目を奪われた。執事にエスコートされながら歩くその姿でさえ、様になる。
すると、そのドレスを纏った私を見て、シェリンダとその執事が顔色を変えた。
「サーシャですって…?!あり得ない!あんな庶民が、ビンテージのドレスを持っているだなんて…っ?!」
彼女は、自分が着ていたオレンジのドレスでさえ霞んで見えるようだ。
プライドの高い彼女は、同じブランドのドレスでマウントを取られたことが悔しくてたまらないらしい。
♪♩〜♫♩♪〜♬♪♫
生演奏に合わせてシャンデリアの下へ進み出た私。
新たな曲の始まりに乗せて、流れるように手を組んだ彼が囁いた。
「笑って、ニナ。君は何も考えずに、ただ、俺に全てを任せて踊ればいいよ。」