お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
「メルさん。そろそろ休憩を挟んではどうです?奥様からの差し入れもありますし。」
アレンの一言で「そうだね。一休みにしよう。」と、マナーブックを閉じるメルさん。
束の間の休息に、どっ、と疲れが出る。
すると、クールながらも心なしか嬉しそうにメロンを頬張っていたメルさんが、私を見つめてさらり、と言った。
「まぁ、ニナもよくやってるし、このまま続ければ戴冠式までには一定レベルの教養が身につくんじゃない?」
「本当ですか…?!初めて褒められた…!」
「今は休憩中だからね。」
彼は、飴と鞭の使い分けも完璧らしい。
コンコン。
ふいに部屋に響くノックの音。
一同の視線が集まったその時、廊下からひょっこり顔を出したのは、軍服の男性である。
「やっほー、久しぶり!いい感じにしごかれてる?」
「ダンレッド…!」
私の声に、にこっ!と笑った彼。
すると、燕尾服を着たメルさんを見た瞬間、ダンレッドは薔薇色の瞳を輝かせた。
「わぁっ!めちゃくちゃカッコいいよ、メル…!なんだか昔に戻ったみたい…!!やっぱり俺の相棒は世界一の執事!!!」
どうやら、ファンクラブはここにもいたらしい。
会員番号一番がキラキラと熱い視線を送っているが、メルさんはクールに受け流している。
「ダン、一体何の用?様子を見に来ただけじゃないんでしょ?」
「あっ、そうだった!実は、ヴィクトル王子から手紙を預かってさ。」