お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


「真の黒幕…?!」


つい、大声が出た。

さっ、と顔色を変えたサーシャは、不安げに瞳を揺らしている。

すると、メルさんは、静かに私へ問いかけた。


「アレンから聞いたけど、社交会でタバスコケーキを仕込まれたんでしょう?」


「あ、はい。いじめっ子令嬢達に…」


「そう。彼女達は、せっかく罠を仕掛けたのに、アレンの機転と味方に取り込んだはずのコックから真相をバラされるという初歩的なミスであえなく返り討ちにあった。…計画の割に行動のツメが甘すぎる。まるで、“誰かに入れ知恵をされて実行した駒”だ。」


目を見開く私に、メルさんはさらに続ける。


「この前の舞踏会でも、実際に会場で罠を仕掛けてきたのはシェリンダだが、ハンスロット家の屋敷にミ・ロヴァの偽物を送りつけてきたのは匿名の誰か。…シェリンダが送ったとも考えられるけど、そう決めつけたこちらを油断させることが黒幕の狙いだという可能性も捨てきれない。」


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