お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
アレンによる静かなお説教が飛ぶ中、ダンレッドはニコニコと笑って楽観的に言葉を続けた。
「いいねー!どうせなら、とびっきり可愛くオシャレして行きなよ!化粧は女の武器って言うじゃん?誰もが見惚れるようなスーパーお嬢様になれば、きっと敵だって怯むでしょ!」
「わあ!ナイスアイデア!」
盛り上がる私とダンレッド。
ノーテンキ組をくすくすと笑いながら見つめるサーシャとルコットも、楽しそうに話し合いに参加する。
そんな中。
メルさんは、少し何かを考え込むような仕草をした後、ひらり、と手招きをした。
「アレン。ちょっとおいで。」
「はい?」
駆け寄るアレンに、燕尾服姿のメルさんはこっそりと囁く。
「少し、“事前作”を打っておこう。もちろん、周りには内緒でね。」
私が、サーシャ達とともに戴冠式で着るドレスの予定をきゃっきゃ、と話している間。
師弟たちの作戦会議が密かに行われていたのだった。