潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
何も気にせずにゆっくり休んで、と言われ、そんなことまだ何も考えてもいなかったのに…と唖然となった。


彼の車に乗せられると、自分の住むマンションの下まで送られた。
シートベルトを外してお礼を言ってから出ようと彼を振り向くと、越智さんはやっぱり少し残念そうな表情を浮かべている。



「あの…今日は本当にありがとうございました」


貴重な体験をさせてもらって…という意味でお礼を言うと、残念そうだった彼の顔が若干綻び、「また一緒に過ごそう」と言ってくる。


「ええ」


即答したものの少し気後れも感じる。今夜みたいな体験をまたすることもあるのかな…と思うと、ちょっと自分には不似合いな気もして。


「それじゃ」


断りを言うと彼に背中を向けてドアへと手を伸ばした。
レバーを引いて力を込めようとしたら、右手をぎゅっと握られてビクッとした。



「香純…」


名前を呼び捨てられ、驚いて反射的に振り返る。
目線を向けると越智さんは頰をほんのりと赤くして、「プライベートでは名前で呼んでもいいかな」と戸惑いながら訊ねてきた。


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