潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
(私が連絡しても、忙しいからと言って会えなかったのはその所為だったんだ。私…智司に二股掛けられてたの…?)


どうして?という思いが頭の中に浮かび、くらりと軽い目眩を覚える。
それでもまだ納得出来なくて、どうして…とまた考え直してしまう。


智司は泣きそうで泣かない私のことを上目遣いに見つめて、「だから…」と再び口火を切った。


「俺、香純にとんでもない不誠実なことをしたと思う。相手の子にもこのまま掛け持ちで付き合うのは止めると宣言したし、だから、今日限りで俺とは別れて欲しい。
…幸い、香純には仕事があるだろ。やり甲斐もあるみたいだし、その仕事、お前によく似合ってると思うんだよ。
真面目でしっかり者で、自社製品を愛してやまない。そういうお前だからこそ、主任を任されたんだと俺は思ってるよ。…ただ、俺は仕事が出来ても出来なくても、ホッと出来る相手の側に居たいんだ。それがただ…香純じゃないってだけのことなんだ」


本当にごめん!と深く頭を下げられ、その頭頂部を見つめた。私は泣きそうになるのを堪えて、ぐっと唇を噛んだ。


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