潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
当然のように言われ、顔色がさぁっと冷めるのを覚えた。
やっぱり聞き間違いでもなかったんだ、と愕然とし、この場で「初めて知りました」とも言えず……。


「は…はい」


顔を引きつらせて話を合わすことしか出来ず、その間部長が話した言葉も耳には入らず、頭がフワフワして、まだ信じきれずに別れて部署へ戻った。


カタン…と椅子を引いて座り込む。
目の前にいた相手が上得意先の社員ではなく副社長。
それを改めて思い出し、うそ、まさか…と呟いた。


私は精々、彼が部長クラスかな…と思って予測を立てていた。
うちのオフィスに発注をしてくるのも彼だったし、企画部辺りに勤務しているんだろうとばかり考えていた。


(それが……副社長……?)


うそ…とまた声を漏らして呆然とする。
そんな上役が研修になんて、そんなことよく部下達が許して___


(いや、そうでもないのか)


許してないからこそ、昼休みに入ったと同時に彼は二課を飛び出していなくなってたんだ。

一緒にいた時も外から電話が入ってたこともあるし、きっとそれも社用で呼び出しが掛かったに違いない。


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