潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
(彼は私よりも忙しい筈なのに、こっちの方を優先なんて……それ、絶対に間違ってる……)


愕然としたままそう思った。
身体中から力が抜けていきそうな気持ちになり、暫く何も出来ずにぼんやりとした___。




午後の仕事はミスばかりだった。
しかも、それを新人社員の彼女に指摘され、流石に自分でもやりきれないものを感じた。


「主任、どうしちゃったんですかー?」


いつもの覇気がありませんよぉーと笑われてしまい、頭の中では(貴女に言われたくないよ)と思っても失笑するしかなく……。


「…本当。どうしたんだろうね」


我ながら本当に情けない気持ちで呟き、短い溜息を吐き出す。
彼のことで自分がこんなに動揺するとは思わず、その後もミスを繰り返しては、修復作業に追われる羽目になってしまった。



仕事が全部終わったのは午後十時半近く。
皆には先に帰ってもらい、誰もいなくなったオフィスで一人黙々と働いた。

パソコンの電源を落とす前、何気なく彼にメールをしてみたいと思ったが__。


(きっとまだ忙しく働いてる筈だ。邪魔なんてしたら、きっと迷惑が掛かる……)


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