潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
ごめんなさい…と頭を項垂れて皿に盛る。
きっと絶対に彼は呆れてると思いながら、はい…と差し出して、どうぞ…と勧めた。


「いただきます」


尚行さんは皿を受け取る前に手を合わせ、箸を持つと、つるっとうどんを口に運ぶ。
その様子を食い入る様に見てた私は率直な感想を聞くのが怖くなり、自分も箸と皿を取ってうどんを取り分けた。


「どう?」とも訊かない食卓。その所為なのか、彼も無言でうどんを食べ勧めてる。
それをいい意味で捉えてはダメだ…と自分に言い聞かせつつ、酸味の混ざったうどんを数本口の中に入れた。


噛みながら、味はまあまあだな、と勝手に自己判断。
マザーズの商品は味も濃すぎず、消費者がアレンジし易いように調味されてるのが特徴の一つだ。



「…俺、こういうの食べたの初めてだけど…」


うどんを味わってた彼が急に声を発し、私は皿を落としそうになった。
いよいよきたか…と覚悟を決めて持ち直し、目線を向けながら言葉が始まるのを待ち構えた。


「なんて言うか、料理って、もっと複雑なのかなと思ってたんだけど、こうやって見ると案外と簡単で気楽に出来るんだな」


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