潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「……あの、初めまして」


急に畏まり、深く頭を項垂れる。
母はそんな彼をちらっと見て、自分も急に肩を竦め、同じ様にお辞儀をして名乗った。


「初めまして。香純の母親で、高畑真理（たかはた まり）と申します」

「僕はこの家の老人の孫で、越智尚行と言います。香純さんとは、先日からお付き合いをさせて頂いてます。今日は祖父に呼ばれて、彼女を会わせに来たところなんです」

「えっ？この子をご隠居様に？」

「お母さん、ご隠居様って、お知り合いなの！？」

「ええ。ここのご隠居様は、私の大事なクランケよ」


今日はその方の定期検診に来たの…と言うじゃないか。
私は目玉が飛びしそうなほど唖然として、言葉も何もかも失った。


呆然としてると尚行さんが手を握り、立ち話もなんですから…と、再度中へどうぞ…と母に勧める。


「折角ですから彼女の子供の頃の話でも聞かせて下さい。祖父もきっと驚いて、話を聞きたがると思いますので」