潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～
さあ…と招かれるが気が重い。
まさか母が、この家のホームドクターを務めていたなんて＿＿。


ずぅーんと重い漬物石でも背負った様な気分。
此処に父が居ない分だけ、まあマシだと思うしかない。


（きっと私の複雑な家庭環境が明らかにされちゃうな。それを聞いたら、尚行さんはどう思ってしまうのかな）


子供の頃のことをちらっとだけど彼には話したことがある。
でも、それはさらりと伝えただけで、詳しいことはまだ何も教えていなかった。


複雑な心境を胸に家の中へ入ると、家政婦のような白いエプロンを身に付けた女性が迎えに来た。
その人は母を見ると「あら先生」と驚き、背後を見て、「あら尚行も」と声をかけている。



「お祖母さん、こんにちは」


彼は和かに挨拶をすると私の肩に手を置き、「彼女。百瀬香純さんです」と紹介した。


「あれ？そういえば、名字が違う」


今更ながらに気付いたらしい。
どうも母との咄嗟の出会いで、尚行さん自身も緊張していたのか、どうして…という風に私に目線を走らせてくる。


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