潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～
濃密で充実した時間を過ごせていると思っていたし、智司自身もそんなに窮屈そうには感じてなかった筈だ。


（…でも、それも私が気づいてなかっただけなのかもしれない）


心の何処かで、智司は別の癒し材料を欲しがっていたのかもしれない。
私が相手ではそれが見つからなくて、その女性には見つかったから、そっちへと気持ちが傾いていったのかもしれない。



（いずれにしろ振られたんだよね、私……）


そう思うと情けなくてまた涙が滲みそうになる。

ぼやっとしてくる視界に気持ちを取り直して、いい加減に吹っ切らないと…と息を吐き出し、マウスを手にして操作を始めた時だ。



「百瀬さん」


中年層の男性の声にビクッと背筋を伸ばし、スッと息を吸い込んでから顔を上げる。
取り敢えず何とか笑みを浮かべて振り返ると、課長が斜め後ろに立ち、私のことを見下ろしていた。


「何でしょうか、課長」


ひょっとしてサボっているところを見られてたのかな…と焦り、必死で笑みを見せて取り繕った。
でも、課長はそんな私の焦りを微塵も感じ取っていない雰囲気で、「君に頼みたいことがある」と言いだす。

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