潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「はい？何ですか？」


仕事をしていなかった後ろめたさから、直ぐに請け負うつもりで返事。
どうせ大した仕事じゃないだろう…と軽く構えていたのに、課長は頷くと体を少し避け、自分の背後に立つ相手を私の視界に入れるようにしながら、実は…と紹介し始めた。


「君も知っているとは思うけど、うちでは関連企業からの研修社員を受け入れている。今回は彼がその研修生で、希望により営業二課に配属されることが決まった」

「はあ」

「その指導を君にお願いしたい。主任として日はまだ浅いが、君なら出来ると僕は信じている」

「え？」

「ああ、ほら君、挨拶をして」


私の声などまるで無視をした課長は、自分の体を避け、研修にきた男性を前面に押し出しながら、顔がよく見えるようにしてみせた。


「初めまして。お世話になります」


暗そうな声で挨拶をした相手は、首からぶら下げたネームを見せながら、自分の名前を告げる。


「越智尚行（おち なおゆき）と申します。宜しくお願いします」