潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
そもそも記念日ってどういう意味?と興味津々な雰囲気で重ねられ、余計なことを言ってぇ〜!と母の言葉が恨めしくなる。


「…えーと、実はね」


それについては、最初から彼に話すつもりでいた。
だけど、立ち話もなんだから…と言うと、彼はさっと腕を取って自分の肘に絡ませ、「だったら俺の部屋へ行こう」と言いながら、通りを走り過ぎようとしたタクシーを止めた。





「…さっ、話してくれよ」


ドスンとソファに腰掛け、前のめりに上半身を曲げる彼。

私は膝の上で掌を組み合わせて、目をキラキラさせている相手を見遣りながら、多少困った様子で室内を見つめ、流石にハウスキーパーさんが入る場所は違うな…と感心していた。



「香純」


いつでも来い…といった雰囲気でいる尚行さん。
私はこれ以上焦らしても埒があかないと観念し、彼の対面にある一人掛けのソファにお尻を着けて、「うん…」と頷いた。


そして、勿体ぶるように目線を彷徨わせ、過去にあった出来事を思い出す。

あの頃、既に今と同じ状況が出来上がっていたな…と思い返しながら彼の方へ目を向け、口角を上げてこう言った。


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