潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
ごめんなさい…と言ったら、「違う」と言って父は抱き締めてくれた。
レンチンでも、私が一生懸命に心を込めて作ってくれたのが嬉しかったんだ、と言ってくれて、感極まって泣いちゃっただけだ、と教えてくれた。


「呆れるくらいの親バカでしょ」


そう言うと、彼は複雑そうに眉間に皺を寄せる。
そんな彼に笑みを見せると『オムライス記念日』と呼ばれることになった理由はそれ、と教え、それ以来、父の日だけは、家族が一緒に過ごす日として決まったんだ…と説明した。


「毎年必ずって訳にはいかなかったけど、その日だけは、前もって三人が休みを合わせて会うことに決まってるの。母はそれを今年もするよ、と言って確認しただけで、だから、父はまた上京してくる筈」


その日の食事の担当はもちろん私。
毎年マザーズの商品を使って料理を作り、父に味見をさせている。


「たまに、とっても無理そうって物も出来てしまうことがあるけど、それでもお父さん、絶対に全部食べきってくれるのよ」


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