潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
「__あの時、それでストップを掛けられたのかな」


きっとそうなんだろうな、と呟きを漏らす相手を見つめ、「あの時?」と訊き返した。
尚行さんは、うん…と言いながら膝の上で手を組み、また体を前に倒して、私のことをじっと見遣る。


「俺が、香純とは今以上に近い関係になりたいと言いかけた時、別に急がなくてもいい、と言われて止められただろ。…香純のお父さん、俺が相手になるのを何気に拒んだんだよな。その前から、結構牽制されてたけどな」


ははは…と力無く笑う様子を見て、何の?と訊いた。
まさかとは思うけど、絶対に気が早いと思う気持ちもあったから。



「……何のって、それを今言わせるのか?」


決まってんだろ、と吐き捨てた彼は、立ち上がると私の方へやって来て、床に膝を着くと正座に近い格好で、無言でじぃっと見つめてくるから胸が鳴った。


ひょっとすると、彼は酔ってるのかな?と思いたい気持ちの裏側で、絶対に酔ってないと信じたい気持ちも膨らんでいく。


だけど、最近付き合いだしたばかりの私達が、まだ先に進むのは時期早な気がして___。



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