潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
どうでもいいけど、こんな至近距離でずっと見つめられるのは心臓に悪い…と感じ、目線を横に背ければ、彼は手を伸ばしてきて両頬を包み、わざと目線を逸らせないようにして、自分の方へと向け直す。



「香純」


名前を呼ぶ彼の顔が次第に近付いてくる。
その距離が縮まると、ドキン…と胸が高鳴り、は…と返事にもならない息だけが漏れた。


「俺はこれまで、香純を絶対に誰にもやらない自信があった。ずっと思い続けてきた相手だからこそ、誰にも邪魔はさせない。そういう気持ちで香純とは接してきたつもりだし、今だって、その気持ちに嘘はないよ。…でも、同じように思っている相手が父親なんてな。なんかちょっと、困るよな」


血は水よりも濃い、とか言うし…と声をくぐもらせて言う。
そう言われても、私は別に父をそこまで思ってないし…と言いたくなると、尚行さんは再び顔を上げて。


「だけど、相手が手強いお父さんでも、俺の香純に対する気持ちに変わらないから。
むしろ、手強い相手だからこそ、歯向かってやると思うし、そういう相手に認められる自分になって、絶対に香純との関係をもっと近いものにする、と決意する」


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