潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
ジェラシー
会食の日から四週間後、両親と共に過ごす日がきた。
いつもはバラバラに住んでいる私達が会する場所は自宅。つまり、普段母が一人で暮らしている一軒家だ。


前の晩、私はオフィスから直接この家に帰った。
母がきっと一人では掃除も何も出来てないだろうと予感して、少しでも綺麗にしておいた方がいいだろうと思い、鍵を開けた。


スゥ…と仄かに甘い香りが漂ってきたのは、玄関に足を踏み入れた時。
え?と思って脇にあるシューズケースに目を向ければ、飾り棚の上に立派なバラのアレンジメントが置かれてある。


「え?これどうしたの?」


母がこんなことする筈がないと思い、何の思いつき?と驚いた。
普段は花の水遣りですらしない母が、たった年に一度の会食の為に、花なんて買う筈がないもん。



「ああ、あれね」


仕事から帰ってきた母を待って、あのアレンジメントはどうしたのかと訊ねた。
母はクク…と笑いを噛みしめると私を振り向き、頂いたのよ…と言ってくる。


「貴女の恋人に」


チャッカリしてるわー、と笑いながら耳に付けているピアスを外し、手元に置いたビール缶に手を伸ばしている。


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