潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
香純の父は、後部座席のドアを閉めると助手席へ移り、俺は隣の運転席に移動してエンジンを掛け、予め登録しておいた住所を選択してハンドルを握ると、いつの間に…といった表情の父に気づき、ああ…と理解して弁解した。


「香純さんのお母さんに住所を教えて貰いました」


別の用件があって…と言うと、「そうか」とまた機嫌の悪そうな声が返る。

こっちは、それもまあ想定内だ…と思って駐車場を抜け、混み入った道路を走りだしながら香純の自宅を目指した。



車内では何か話をしよう…と思うんだが、じっと姿勢を正して前を向いている相手には話しかけづらく、流石にちょっと困って香純の提案に気弱にもなりかけたが__。



「この間は、お忙しいのにご両親にも時間を作ってもらって」


思いがけず、先に口を開いた香純の父から切り出され、いえ…と驚き半分で返事をした。


「こっちこそ、お忙しいのにわざわざ上京して頂いて、有難うございました」


とんぼ返りだったのを思い出してお礼を言うと、当然…とばかりに唇の端が歪み。


「家内が、『香純の彼氏と両親に会うわよ』と断定して言ってきたので」


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