潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
あいつはいつも俺の予定はまるで気にしないから…と弱った調子で言うものだから、俺はついククッ…と苦笑してしまった。


「言いそうですね」


調子に乗って言葉が過ぎたが、そうだろ、と案外と気安く返事が戻った。


「どうも出会った頃から向こうのペースでね」


医者だから気が強くて、と参るように話し、俺は頷きながら「成る程」と返す。
何だか変に構える必要もなかったのかと安心していると、声を低めて「ところで」と言われ、ビクッとして目線を流した。


「香純とは、真面目なお付き合いですか?」

「は?」

「いや、君のような男が、アレと本気で付き合ってるとは、ちょっと思えませんのでね」


自分の娘ながら、家事能力は低いですから…と肩を落とし、母親が母親だからな…と散々なものの言い方をする。


「君ならもっと家事能力が高くて、家庭的な女性が合うだろうに」


企業の副社長ではあるし、何も香純でなくても…と、結局は俺を否定したいだけの様な感じだ。


「……俺は別に、家庭的な女性を望んではおりませんが」


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