潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
反論するように囁くと疑わしそうな目線を向けられ、そう言えば似た様なセリフを祖父の誕生日パーティーでも言ったなと思い出して続きを話した。


「俺は香純さんと同じ様な環境で育ってきたからですかね。必ずしも女性が家に居て、家事一切をしなければいけないとは考えたこともありませんし、勿論、彼女が是非そうしたいと望むなら、多分反対もしないとは思うんですが、それよりも今の仕事を生き甲斐のように感じて、イキイキしてくれてた方が、自分も仕事を張り切ってできそうでいいかな、と思います」

「君は、香純が仕事を生き甲斐に思っているとでも?」

「ええ、思っていると感じてますよ。彼女の夢は、自分と似た様な境遇にある子供達に、ハピネス・マザーズフードの商品の良さを広めていくことらしいですから」


この間聞いた父の日のオムライスの件を思い出しながら言うと、彼女の父は少し黙り込み、ボソッと「似た様な境遇か」…と声を漏らした。


「俺は香純には、自分と同じ思いを子供にさせて欲しくないんだがな」


父親なりの後悔や希望を込めた言葉を漏らし、詰まらなさそうに溜息を吐く。
< 237 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop