潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
(こんなボロボロな精神状態で指導……マジで勘弁して欲しい)


泣き出しそうになりながらも、研修社員の彼に目線を向け直す。
身長が高くてぱっと見百八十センチはありそうな彼を見つめ、はぁ…と息を吐き出して椅子から立ち上がり名刺を差し出した。


「営業部二課で主任を務めています。百瀬香純です」


宜しくお願いします…と名刺を渡すと、越智と名乗った研修社員はそれをジッと見つめながら頷き、それから私に目線を向け直して、ちょこんと小さな一礼をした。


(おいおい、ちょっとは愛想良くしようよ)


仮にも自分から希望して営業に来たんでしょ?と思いつつも、最初から苦言を呈する気にもならず、スルーして向かい側の空いているデスクを使ってと指示。
その前に同じ島の人達にも挨拶を…と促したが、無言で嫌そうな表情をされ、「まあ、おいおいでいいから」と譲歩した。


(なんか、指導し難い人)


難しそうだな、と思いながら会社の概略から教えることにした。

研修に来るからには、それなりに下調べもしている筈だと思ったが、きちんとそこを理解して貰わないと商品の斡旋も出来ないだろうと感じたんだ。


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