潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~

「どんな感じの女性なの?美人?」


問う彼女に、里穂と呼ばれた人は、ううん…と返事する。


「別に普通の人だった。特別美人でもなかったし、どっちかと言うとユルい雰囲気の人で、地味でバリキャリでもない感じに見えた」


怒りで否定的な見方しか出来なかった…と呟く彼女は、あーあ…と声を吐き出した。


「あーいうのが、越智君の好みなのかな」


そうならまた幻滅…と力無く言い、行こうか…と相手の女性に声をかけている。


「私、もう少し付き合ったら帰るわ。もうあの人がいる場所にいつまでも居るのは耐えれないし、一人でヤケ酒でも呷りたい気分」


相手の女性は、それなら自分が付き合ってあげると返事して、飲もう飲もう…と言いながらトイレの外へと出て行く。




「はぁ…」


グッタリ疲れて個室から出た私は、さっきの秘書さんの顔を思い浮かべ、それであんな厳しいことを私に言ったんだ…と実感した。


(私もあんな風に自分の感情を表に出せればいいんだろうけど)


どうにも幼い頃から感情を抑えてしまう習慣がついている。
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